生命倫理をテーマにした洋書「My Sister's Keeper」を紹介してみる(邦訳)私の中のあなた

My Sister's Keeper

デザイニングベイビー

『私の中のあなた』(原題”My Sister's Keeper”)は、
着床前診断と臓器提供を題材にしたジョディ・ピコーの話題作です。

幼い頃から白血病を患うケイトは、病気の治療のためにドナーを必要としますが、
家族である両親も兄もドナー不適合でした。

そこで両親が決断したのは、ケイトHLA型とがマッチした子供を着床前診断によって作る事。

具体的には、ドナーに適合する遺伝子を、受精卵の段階で選別し、
体外受精で妊娠すること。つまり、ドナーを「デザイン」したのです。

こうして生まれたのが妹のアナでした。
ストーリーはアナが両親を告訴するために、弁護士の元を訪れる所からスタートします。

衝撃的な家族背景もさることながら、
ティーネージャーであるアナが両親を訴えるという、序盤からスピーディーな展開なのです。

家族の葛藤


本書では重病に纏わる家族の葛藤が生々しく鮮明に描かれています。

重い病に蝕まれ、入退院や手術を繰り返し、普通の子供時代・青春時代を病気に奪われたケイト。

そしてケイトを支える両親の不安な心境。ドナーとして幼い頃から手術を強いられ、
自分の存在意義を自問自答するアナ。そしてドナーにはなれず、家族の中で孤独感を深める兄のジェシー

病気の子供とそれを支える家族、という一言では片づけられない、
各々の苦しみが、生々しく描かれています。

ケイト中心の家族の在り方に反発するアナとジェシーの姿もまた、読者に病気の苦しさを訴えるものがあります。

そして裁判を起こしたアナの真意が分からず、家族は混乱の渦に陥ります。

アナがドナーにならなければ、ケイトは生きられない。この大前提が、アナの訴えによって覆ろうとしているのです。

アナの真意、そして衝撃の結末・・・。

なぜアナは裁判を起こしたのか
その発端となった人物が終盤で明かされ、ストーリーは衝撃的な展開を迎えます。

アナはどうするのか?

ケイトはどうなってしまうのか?

「臓器を提供する・しない」の単純な問いでは解き明かせない、衝撃の結末が待っています。

本書は着床前診断という難解なテーマを扱いながらも、
難病患者の日常の描写がリアルで、真に迫るものがあります。

デザイニングベイビーや、臓器提供は許されるのか。

その問いに様々な角度から答えを探す問題作です。

「大切な人に生きながらえて欲しい」という、人としてごく当たり前の願いには同意せざるを得ませんが・・・。

果たして同じ立場に立った時、自分ならどう判断して何を信じるべきか、考えさせられる作品です。