洋書「Primal Fear 」で感じる人間の二面性。【邦題】真実の行方

Primal Fear (English Edition)

悪役にしか見えない主人公

1993年に出版された小説で、司祭が何者かによって殺害されたという、
事件をめぐるストーリーなのですが、ただのサスペンスや刑事ものではなく、
人の猟奇的な一面をよく描いたものなのです。

この事件の容疑者として逮捕されたのは、教会で司祭の手伝いをしていたアーロンという少年でした。

その事件に目を付けた主人公の弁護士マーティンは、アーロンの弁護人として立候補します。

小説の前半ではマーティンの腹黒さがとにかく強調されています。

何としてでも裁判に勝ちたいという彼の思いは、自身のプライドを守るためであり、
決して依頼人を守るためではないということが描かれています。

また、この裁判でのマーティンの敵となる警察側の弁護士にはマーティンの元恋人ローラがついていて、元恋人を負かすためにも、マーティンはあの手この手を使ってアーロンの無罪を主張するのです。その様子がずる賢く、まるでマーティンが悪役のようにも見えます

主人公に正義感が芽生える

この裁判の難しさは、アーロンがとても人を殺しそうには見えない弱々しい少年であるにもかかわらず、
彼が容疑者としか言いようが無い証拠が残っているということです。

マーティンもさすがにアーロンの秘密が気になり始め、
アーロンを問い詰めます。すると、動揺したアーロンの態度は急変し、突然凶暴になるのです。

そこで読者はようやくアーロンが多重人格者であることを知ります。

つまり、凶暴な人格の時のアーロンが殺人を犯し、弱い人格の彼はそれを覚えていないのです。

この状況にマーティンは裁判に勝つ方法として、
裁判の最中に凶暴なアーロンを引き出し、彼の多重人格症の病を全員に見せつけるという荒業に出ます。

そうまでして裁判で勝利したいマーティンですが、
物語の後半ではマーティンの目的は自らのプライドを守るためではなく、
司祭から性的虐待を受け(物語の中盤でアーロンが司祭から虐待される様子が映ったビデオが見つかります)、
精神病になってしまい、貧しく行く場所もないアーロンという少年を助けたいという、
正義感で弁護をしているように見えてきます。

読者と主人公の期待を裏切るラスト


裁判に勝利するマーティンですが、
アーロンが自分の人格が凶暴になっている時のことを記憶しているような発言をします。

おかしいと気づいたマーティンに、アーロンは衝撃の事実を告げます。

この小説で描かれる人間の二面性に、読む人は驚かされる。

たまにamazonKindle Unlimited の対象になっていたりするので是非。