【洋書】トマス・ハリス著「ハンニバル」に見るラブストーリー【ネタバレあり】

Hannibal (Hannibal Lecter)

レクター博士の恋心

「ハンニバル」はトマス・ハリスの小説で、3部作の最終巻です。

これより前の作品「羊たちの沈黙」で初めて出会ったFBIの女性捜査官クラリスと、
連続殺人犯のレクター博士の奇妙な関係は「ハンニバル」でかなり前進することになります。

レクター博士を逮捕しようと追っていたクラリスですが、
小説の最後ではなんとレクター博士と駆け落ちし、結婚してしまうのです。

前作ではそのような結末になるとは予想もつかないのですが、
本作を読み終わってからよく考えると、二人は惹かれあっていたような気がしないこともないのです。

確かにレクター博士がクラリスに嫌みを言ったり、
彼女を追い詰めたりしていたのは、彼女が好きだったからつい意地悪く接してしまっていたようにも思えます。

またクラリスが彼を追うのも、ひょっとして恋心からではとも推測出来、
もしかしてこの作品はサスペンスではなくラブストーリーだったような気さえしてきます。

レクター博士の宿敵ヴァージャーの博士への想い

この物語では、レクター博士が当時精神科医だった頃知り合ったヴァージャーという男が出てきます。

ヴァージャーは昔レクター博士に追い詰められたせいで、
自分で自分の顔の皮膚を剥いでしまい、全身が不自由になってしまいました。

彼はそのことで博士を恨み復讐を計画するのですが、
ヴァージャーはただレクター博士を恨んでいただけではなく、
彼に近い存在であるクラリスに嫉妬するような場面もあり、
博士のことを少し好きだったのではとも思える。

ヴァージャーが博士に対し、尊敬と憎しみの両方の気持ちを抱いていることが分かるようなことが、
小説のいたる所で表現されていて、性的な表現もあるので、
同性愛的な恋愛感情があったようにも読み取ることが出来る。

映画との違いを楽しむ

小説「ハンニバル」は同名の映画となりましたが、
映画ではカットされていたのが、クラリスと博士の結婚という衝撃のエンディングです。

この部分を何故映画にしなかったのかと思う程面白い展開なので、若干もったいないように気もします。

かし、映画を先に見た人は、小説での意外な結末に驚くことが出来、2度美味しい作品となるかもしれません。

また、映画ではヴァージャーの妹の存在もカットされており、
小説ではその妹とバーニー(レクター博士が投獄されていた時の世話係の男)との恋も描かれています。

その妹が精神障害に悩んでいて、バーニーに少し心を開きつつある場面などは、恋愛小説の一節のよう。

「ハンニバル」は、サスペンスとしてはもちろん、そのなかに潜むラブストーリーも同時に楽しめる小説です